Power BIでFour Keysメトリクスを可視化する方法
1. はじめに
Four Keysメトリクス(4つの主要指標)は、ソフトウェア開発チームのパフォーマンスを評価するための重要な指標です。これはGoogleのDORA(DevOps Research and Assessment)チームが提唱したもので、以下の4つの指標から構成されます。
- デプロイ頻度(Deployment Frequency): 本番環境へのリリース頻度
- 変更リードタイム(Lead Time for Changes): コードの変更が本番環境に反映されるまでの時間
- 変更障害率(Change Failure Rate): 本番リリース後に障害が発生する割合
- 平均復旧時間(Mean Time to Restore, MTTR): 障害が発生してから復旧するまでの平均時間
本記事では、Power BIを使ってFour Keysメトリクスを可視化する方法を解説します。
2. データの準備
Power BIでFour Keysメトリクスを可視化するために、まずデータを収集・整理する必要があります。データソースは以下のようなものが考えられます。
- GitHub / GitLab / Bitbucket(プルリクエストやデプロイ履歴)
- Jenkins / GitHub Actions / Azure DevOps(CI/CDパイプラインの実行ログ)
- Datadog / Splunk / New Relic(システム監視データ)
- JIRA / ServiceNow(障害対応時間)
2.1. データ構造
CSV またはデータベースで、以下のようなデータを準備します。
DeployID | DeployDateTime | CommitID | LeadTime | ChangeFailure | RestoreTime |
---|---|---|---|---|---|
1001 | 2024-02-01 10:00:00 | abc123 | 5 | 0 | NULL |
1002 | 2024-02-02 15:30:00 | def456 | 8 | 1 | 120 |
1003 | 2024-02-05 09:45:00 | ghi789 | 6 | 0 | NULL |
DeployDateTime
: デプロイ日時LeadTime
: コードのリードタイム(単位: 時間)ChangeFailure
: 障害発生(1 = 失敗, 0 = 成功)RestoreTime
: 障害復旧時間(単位: 分)
3. Power BIでの可視化手順
3.1. データの取り込み
- Power BIを開く
- [データの取得] → [CSV] / [データベース] からデータをインポート
Transform Data
をクリックし、必要なデータ型を調整(例: 日付型、数値型)
3.2. メトリクスの作成(DAX)
Power BIの DAX(Data Analysis Expressions) を使って、メトリクスを計算します。
① デプロイ頻度(Deployment Frequency)
DeploymentFrequency = COUNT('Deployments'[DeployID])
ビジュアル:
- 棒グラフ(月ごとのデプロイ頻度)
- カード(数値表示)(全期間のデプロイ回数)
② 変更リードタイム(Lead Time for Changes)
AverageLeadTime = AVERAGE('Deployments'[LeadTime])
ビジュアル:
- 折れ線グラフ(時間経過に伴う変化)
- カード(平均リードタイム)
③ 変更障害率(Change Failure Rate)
ChangeFailureRate = DIVIDE( SUM('Deployments'[ChangeFailure]), COUNT('Deployments'[DeployID]), 0 )
ビジュアル:
- ドーナツチャート(成功 vs 失敗)
- 棒グラフ(月ごとの障害率)
④ 平均復旧時間(MTTR: Mean Time to Restore)
MTTR = AVERAGE('Deployments'[RestoreTime])
ビジュアル:
- 折れ線グラフ(障害ごとの復旧時間)
- カード(MTTRの数値表示)
4. ダッシュボードのデザイン
Power BIのレポートページで、以下のビジュアルを配置します。
メトリクス | ビジュアル | 備考 |
---|---|---|
デプロイ頻度 | 棒グラフ + 数値カード | 週/月ごとの変化を可視化 |
変更リードタイム | 折れ線グラフ + 数値カード | 過去の推移を比較 |
変更障害率 | ドーナツチャート + 棒グラフ | 成功 vs 失敗を可視化 |
MTTR | 折れ線グラフ + 数値カード | 平均復旧時間の推移 |
4.1. カラーリングのポイント
- 成功:青 or 緑
- 失敗:赤(エラーが目立つように)
- リードタイム:黄色(時間経過の視認性向上)
5. 自動更新の設定
データを定期的に更新するには、Power BIの自動更新機能 を設定します。
5.1. 手順(Power BI Service)
- Power BI Desktop でレポートを作成・保存
- Power BI Service(オンライン)にレポートを公開
- [データセット] → [スケジュール更新] を開く
- データソースの認証情報を設定
- 更新頻度を設定(例: 1時間ごと)
6. まとめ
本記事では、Power BIを使ってFour Keysメトリクスを可視化する方法を解説しました。
DevOpsのパフォーマンスを継続的に測定し、改善ポイントを明確にすることで、開発チームの生産性向上に役立ちます。
次に学ぶべきトピック
- Power Automate を使ったアラート通知(SlackやTeams連携)
- SQL ServerやGoogle BigQueryとのデータ統合
- Four Keysのベンチマーク(Elite, High, Medium, Low)との比較
これらの拡張機能を組み合わせて、より高度なDevOps分析を実現しましょう!