RAG(Retrieval-Augmented Generation)とは?— 仕組みと活用方法
1. RAG(Retrieval-Augmented Generation)とは?
RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、情報検索(Retrieval) と テキスト生成(Generation) を組み合わせた自然言語処理(NLP)の手法です。主に大規模言語モデル(LLM)に適用され、外部データベースやドキュメントから関連情報を取得し、それを基に回答を生成することで、より正確で最新の情報を提供できます。
この技術は、特に以下のような用途で活用されています:
- チャットボット・カスタマーサポート(FAQの自動回答)
- ドキュメント検索と要約(企業内ナレッジ検索)
- 医学・法律・金融分野の情報提供(専門知識を必要とする分野)
2. RAGの仕組み
RAGは、以下の2つの主要なステップで動作します。
① 情報検索(Retrieval)
事前に用意された外部データ(データベース、ドキュメント、論文など)から、ユーザーの質問に関連する情報を検索します。この検索には ベクトル検索(Vector Search) や BM25 などの情報検索アルゴリズムが利用されます。
② 生成(Generation)
検索された情報をもとに、大規模言語モデル(LLM)が回答を生成します。検索したコンテンツを直接利用することで、言語モデルが持つ知識の限界を超えた正確な情報提供が可能になります。
RAGのアーキテクチャ
以下のMermaidを使ったフロー図で、RAGの処理の流れを示します。
graph TD; A[ユーザー入力] --> B[情報検索(Retrieval)] B --> C[ベクトルデータベース/検索エンジン] C --> D[関連情報の取得] D --> E[LLMによる回答生成(Generation)] E --> F[ユーザーへ出力]
3. RAGと従来のNLPモデルの違い
従来のNLP(LLMのみ)
- 事前学習済みのデータに基づいて回答を生成する。
- 新しい情報を学習し直さない限り、アップデートができない。
- 知識のカバー範囲が限られる。
RAG
- 外部データを利用するため、最新情報に対応可能。
- 専門分野の知識を組み込むことで、より正確な回答が可能。
- データベースの変更だけで知識のアップデートが可能。
4. RAGの実装方法
RAGを実装するには、以下のような技術スタックを利用します。
(1) ベクトルデータベース
検索精度を向上させるために、文章を 埋め込みベクトル(Vector Embeddings) に変換し、類似検索を行います。
- 代表的なベクトルデータベース
- FAISS(Facebook開発)
- Weaviate
- Pinecone
- ChromaDB
(2) LLM(大規模言語モデル)
RAGでは、検索した情報をもとにテキストを生成するため、以下のようなLLMを利用します。
- GPT-4, GPT-3.5
- Llama(Meta)
- Claude(Anthropic)
- Mistral
(3) RAGのフレームワーク
PythonでRAGを実装する場合、以下のフレームワークを活用できます。
- LangChain(RAG構築の定番)
- LlamaIndex(データ検索向け)
- Haystack(ドキュメント検索に特化)
5. RAGの活用事例
(1) 企業のナレッジ管理
社内の膨大なドキュメントやFAQを検索し、適切な回答を提供。
(2) 医療・法律分野
論文や法律データベースを参照し、最新の正確な情報を提供。
(3) eコマースのカスタマーサポート
過去の問い合わせや製品データを活用し、適切な回答を生成。
6. まとめ
- RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、情報検索とテキスト生成を組み合わせた技術。
- 従来のNLPと違い、最新の情報を組み込めるのが強み。
- ベクトル検索やLLMを組み合わせることで、高精度な応答が可能。
- LangChainやLlamaIndexなどのツールを使って実装ができる。
今後、RAGはより多くの企業やサービスに導入され、AIの応用範囲を広げていくでしょう。