ラダー vs ST(構造化テキスト):最新の制御プログラミングの選択と最適化
1. はじめに
PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)を用いた制御システムでは、
ラダー(Ladder Diagram:LD)と構造化テキスト(Structured Text:ST) が一般的なプログラミング言語として使用されます。
近年、産業用制御システムの高度化やIoT・AIの導入 により、
ST(構造化テキスト)がより広く採用されるようになりました。
本記事では、ラダーとSTの比較、メリット・デメリット、適用シーン、最新の制御トレンド について詳しく解説します。
2. ラダー(LD)とSTの基本概要
2.1. ラダー(Ladder Diagram)とは?
ラダー図(LD) は、電気回路のリレー制御を模したPLCのプログラミング手法 です。
シンプルな論理制御を直感的に記述できるため、古くから制御システムで広く採用 されています。
✅ メリット - 視覚的に分かりやすく、現場技術者が直感的に理解しやすい - リレー回路の知識を活かせるため、電気制御技術者に馴染みがある - トラブルシューティングが容易(オンラインモニタリング機能が充実)
❌ デメリット - 複雑な演算処理やループ処理が苦手 - 大規模プログラムでは可読性が低下し、メンテナンスが困難 - オブジェクト指向や再利用性に乏しい
2.2. ST(構造化テキスト)とは?
ST(Structured Text) は、C言語やPythonのようなテキストベースのPLCプログラミング言語 で、
IEC 61131-3 規格に準拠 しています。
✅ メリット - 複雑なアルゴリズムや数値演算が得意 - 関数・構造体・オブジェクト指向プログラミングが可能 - 可読性が高く、再利用性の高いモジュール設計が可能
❌ デメリット - ラダーに比べて、電気制御技術者には馴染みが薄い - オンラインデバッグ時の視認性が低い - 単純なリレー回路の置き換えには適さない
3. ラダー vs ST:適用シーンの比較
比較項目 | ラダー(LD) | ST(構造化テキスト) |
---|---|---|
適用領域 | シンプルな論理制御、機械制御 | 複雑な演算、データ処理、AI制御 |
可読性 | 視覚的で直感的 | コードベースで整理しやすい |
学習コスト | 低い(電気制御経験者向け) | やや高い(プログラミング経験者向け) |
処理速度 | 遅い(スキャンタイム増大) | 速い(最適化されたコード実行) |
デバッグのしやすさ | グラフィカルで分かりやすい | ロギング・シミュレーションが必要 |
IoT・AI連携 | 不向き(データ処理が苦手) | 適している(AI・クラウド連携) |
4. 最新の制御技術とラダー/STの進化
近年の制御技術では、IoT・AI・エッジコンピューティングの進化 により、
従来のラダーでは対応困難な高度なデータ処理が求められる ケースが増えています。
4.1. 最新技術との連携
技術要素 | ラダーの適用 | STの適用 |
---|---|---|
IoT連携(MQTT, OPC UA) | 難しい | STでスムーズに実装可能 |
AI/機械学習(予知保全) | 非対応 | Python連携で実装可能 |
ビッグデータ解析 | 不向き | データロギング・分析に適用可能 |
クラウド連携(AWS, Azure) | 限定的 | REST API連携が容易 |
多軸モーション制御 | 基本的な制御は可能 | 高度な軌跡生成・制御に適用可能 |
✅ STは、クラウド・AI・IoTなどの最新技術と親和性が高い!
✅ ラダーは、シンプルな論理制御向けで、従来の制御ロジックに適している!
5. ラダーとSTのハイブリッド活用
最新のPLCプログラムでは、ラダーとSTを組み合わせたハイブリッド構成 が一般的です。
5.1. ハイブリッド活用のパターン
- 基本的なON/OFF制御やシーケンス制御はラダーで記述
- 複雑な計算・データ処理はSTで記述
- ラダーからSTの関数ブロック(FB)を呼び出し、モジュール化する
5.2. 具体的なコード例
ラダー(LD)で基本的なリレー制御
(StartButton) ---[ ]---+---( Output ) | (StopButton) ----[ / ]---+
✅ シンプルなON/OFF制御はラダーで直感的に実装!
STでデータ処理や演算を実装
PROGRAM PID_Control VAR SetPoint : REAL := 50.0; ProcessValue : REAL; Output : REAL; Kp : REAL := 1.5; Ki : REAL := 0.5; Kd : REAL := 0.1; END_VAR (* PID制御ロジック *) Output := Kp * (SetPoint - ProcessValue) + Ki * INTEGRAL(SetPoint - ProcessValue) + Kd * DERIVATIVE(SetPoint - ProcessValue);
✅ 高度な演算処理や制御アルゴリズムはSTで実装!
✅ ラダーからSTの関数ブロックを呼び出すことで、ハイブリッドな制御が可能!
6. まとめ
項目 | ラダー(LD) | ST(構造化テキスト) |
---|---|---|
視認性 | グラフィカルで分かりやすい | コードベースで整理しやすい |
学習難易度 | 低い(制御技術者向け) | やや高い(プログラマー向け) |
デバッグ | 直感的なデバッグが可能 | ログ・シミュレーションが必要 |
IoT・AI対応 | 非対応 | Python・クラウド連携が可能 |
最適な用途 | シンプルな制御ロジック | 複雑なデータ処理・最適化 |
結論
- ラダーは、リレー回路を置き換えるシンプルな制御に最適。
- STは、AI・IoT・クラウド連携を含む高度な制御に適している。
- 最新の制御では、ラダーとSTのハイブリッド活用が主流!
今後のPLCプログラミングでは、ラダーとSTの適材適所の活用がカギ となります。
最新技術を取り入れながら、最適なプログラミング手法を選択していきましょう!