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KISSの原則 シンプルな設計に必要な考え

KISSの法則とは? – シンプルさを極める設計原則

1. はじめに

ソフトウェア開発やシステム設計において、「シンプルであること」は非常に重要です。複雑な設計やコードは、バグの発生を増やし、保守のコストを高めます。
そんな中で広く知られているのがKISSの法則(Keep It Simple, Stupid)です。

KISSの法則は、「できる限りシンプルな設計を心がけるべき」という原則を示しています。本記事では、KISSの法則の概要、メリット、実際の適用例について詳しく解説します。


2. KISSの法則とは?

KISSの法則(Keep It Simple, Stupid)は、シンプルな設計を推奨する原則であり、次のような考え方に基づいています。

  • 単純な設計の方がエラーが少なく、理解しやすい
  • 複雑なシステムは保守性が低下し、変更が困難になる
  • 本当に必要な機能だけを実装し、過剰な設計を避ける

この考え方は、ソフトウェア開発に限らず、建築設計、ビジネス戦略、プロダクトデザインなど、あらゆる分野で活用されています。

KISSの法則の起源

KISSの法則は、1960年代にアメリカの航空技術者であるKelly Johnsonが提唱したものです。彼は軍用機の設計において、「整備士が特別なツールを使わずに修理できるように、シンプルに設計すべきだ」と考えました。この考えがソフトウェア開発にも適用され、現在のKISSの法則として知られています。


3. KISSの法則のメリット

KISSの法則を実践することで、以下のようなメリットがあります。

(1) コードの可読性向上

  • シンプルなコードは、他の開発者が理解しやすく、保守が容易になります。
  • 例えば、冗長なコメントが不要になり、コードだけで意図が伝わるようになります。

(2) バグの削減

  • 複雑なコードはバグが発生しやすくなりますが、シンプルなコードならエラーの可能性を減らせます。
  • デバッグも容易になり、修正コストが下がります。

(3) 保守性の向上

  • シンプルな設計は、将来的な変更や拡張がしやすくなります。
  • 不必要な依存関係を減らすことで、スケーラビリティも向上します。

(4) 開発スピードの向上

  • 過剰な設計や不必要な機能を削減することで、開発がスムーズに進みます。
  • MVP(Minimum Viable Product)開発にも適しています。

4. KISSの法則の適用例

(1) コード設計におけるKISSの適用

❌ 悪い例(複雑すぎるコード)

def get_discounted_price(price, discount, tax_rate=0.1):
    if discount > 0 and discount < 1:
        discounted_price = price - (price * discount)
        final_price = discounted_price + (discounted_price * tax_rate)
        return final_price
    elif discount == 0:
        return price + (price * tax_rate)
    else:
        return "Invalid discount"

このコードは、条件分岐が多く、意図が分かりづらくなっています。

✅ 良い例(シンプルなコード)

def get_discounted_price(price, discount, tax_rate=0.1):
    if not (0 <= discount < 1):
        raise ValueError("Invalid discount")
    
    discounted_price = price * (1 - discount)
    return discounted_price * (1 + tax_rate)
  • 条件を整理し、コードの可読性を向上。
  • エラー処理もシンプルに統一。

(2) UI/UXデザインにおけるKISSの適用

  • ❌ 悪い例: 不要なボタンや情報を詰め込みすぎた複雑なインターフェース
  • ✅ 良い例: 必要最低限の機能を提供し、直感的なデザインにする

例として、Googleの検索画面は非常にシンプルで、余計な機能がなく、KISSの法則を体現しています。


(3) システム設計におけるKISSの適用

  • ❌ 悪い例: 多数のマイクロサービスを使用し、依存関係が複雑すぎるシステム
  • ✅ 良い例: モノリシックな構成を採用し、シンプルなアーキテクチャを維持する

5. KISSの法則を実践するためのポイント

  1. 機能を最小限に抑える

    • 初期リリース時にすべての機能を実装しない。
    • 必要最小限の機能でリリースし、ユーザーのフィードバックを反映して進化させる。
  2. 単一責任の原則(SRP: Single Responsibility Principle)を守る

    • 一つの関数・クラスが複数の役割を持たないように設計する。
  3. DRY(Don't Repeat Yourself)を意識する

    • 重複したコードを削減し、再利用可能なコードを意識する。
  4. 「シンプルだが機能的」な設計を心がける

    • 単にコードを短くするのではなく、意味のあるシンプルさを追求する。

6. まとめ

KISSの法則(Keep It Simple, Stupid)は、シンプルな設計を推奨する重要な原則です。
特に、コード設計、UI/UX、システムアーキテクチャにおいて適用すると、可読性の向上、バグの削減、保守性の向上、開発スピードの向上といったメリットが得られます。

開発においては、「複雑な設計が必ずしも優れているわけではない」ことを意識し、できる限りシンプルな設計を心がけましょう。


7. 参考リンク