CMakeを中心にしたビルドシステム比較:Make、Meson、Bazel、Ninja、SConsとの違い
C/C++プロジェクトの構成管理やビルドの自動化には、ビルドシステムが不可欠です。その中でもCMakeは、クロスプラットフォームなプロジェクトで広く使われている定番ツールです。しかし他にも、Make、Meson、Bazel、Ninja、SConsなど多様な選択肢があり、開発スタイルやプロジェクトの規模に応じて適切なツールを選ぶことが重要です。
この記事では、CMakeを中心に据えて、他の主要なビルドシステムとの違いを機能・構文・運用面から徹底比較します。
1. CMakeとは?
概要
CMakeは、KDEプロジェクトによって開発されたクロスプラットフォーム対応のビルドシステム生成ツールです。CMake自体は直接ビルドを行わず、MakeやNinjaなどの低レベルビルドツール用の設定ファイルを生成します。
特徴
- プロジェクト構成を抽象化し、マルチプラットフォーム対応を容易に
- Visual Studio、Xcode、Unix Makefiles、Ninjaなどに対応
- 外部ライブラリの検出やインストール設定(
find_package
,install()
)に対応 - モダンCMake(3.x以降)では、対象指向のターゲットベース構成が推奨されている
2. CMakeと他のビルドシステムとの比較
比較表
特徴 | CMake | Make | Meson | Bazel | Ninja | SCons |
---|---|---|---|---|---|---|
構成言語 | 独自(CMakeLists.txt) | 独自(Makefile) | Python風DSL | BUILDファイル(Starlark) | Ninja用ルール | Pythonスクリプト |
実行エンジン | 外部(Make/Ninjaなど) | 自前 | Ninja | 自前 | 自前 | 自前 |
クロスプラットフォーム対応 | ◎ | ○(設定が必要) | ◎ | ◎ | △(補助ツール必要) | △ |
速度 | ○ | △ | ◎(非常に高速) | ◎(キャッシュ対応) | ◎(非常に高速) | △ |
拡張性 / 記述力 | ○ | ◎ | ○ | △(制限あり) | ×(直書き困難) | ◎(Pythonの力) |
学習コスト | 中 | 低 | 中 | 高 | 高 | 中 |
依存管理 | ○(find_package , FetchContent) |
△ | ◎(明示的) | ◎(厳格な定義) | × | △ |
インストール/パッケージ | ◎(install , CPack ) |
× | △ | × | × | △ |
3. 具体的な比較ポイント
3.1 構文と可読性
CMake
cmake_minimum_required(VERSION 3.16) project(MyProject) add_executable(main main.cpp)
Make
main: main.o g++ -o main main.o main.o: main.cpp g++ -c main.cpp
Meson
project('myproject', 'cpp') executable('main', 'main.cpp')
→ Mesonは簡潔、CMakeは柔軟、Makeは明示的
3.2 ビルド速度
- CMake + Ninja:インクリメンタルビルドが高速
- Meson + Ninja:依存関係の解析がさらに最適化されており、初回ビルドも速い
- Bazel:キャッシュとリモートビルドで大規模ビルドに強い
- Make/SCons:依存関係の更新検出が甘く、ビルド時間が伸びやすい
3.3 ライブラリ管理と外部依存
- CMake:
FetchContent
,find_package
,ExternalProject
など豊富な外部連携 - Meson:
wrap
機能でGitHubなどのソースも依存に含められる - Bazel:独自のワークスペース依存モデルで非常に厳格
- Make/SCons:基本的に自前で解決する必要あり
3.4 IDEとの連携
- CMake:Visual Studio、CLion、Xcodeとの統合が強力
- Meson:VS Code連携が可能(拡張が必要)
- Make:サポートは弱い。設定に手間
- Bazel:IntelliJなどGoogle系エディタと相性良好
4. CMakeを採用すべきケース
- 複数のOSやコンパイラに対応するプロジェクト
- 大規模ではないが中〜長期で成長するプロジェクト
- 既存のC++ライブラリやツールと連携が必要な場合
- Visual StudioやCLionなどのIDEを使いたい場合
5. まとめ
CMakeは、C++開発者にとって現代の標準的ビルド構成ツールといえる存在です。しかし、他にも用途に応じて適したツールは存在します:
- Make:シンプルなプロジェクトに
- Meson:高速ビルドと簡潔な構文が魅力
- Bazel:スケーラビリティと再現性を重視する企業向け
- SCons:Pythonの力を活かした柔軟構成
- Ninja:他のツールの裏方として高速ビルドを支える
CMakeの柔軟性と拡張性をベースに、必要に応じてこれらのツールを組み合わせて使うことも現実的な戦略です。
参考リンク
参考書籍
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