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スケーラビリティを考える:アーキテクチャの変化に対応する設計思考

アーキテクチャの流儀:変化に強い設計の思考法

ソフトウェア開発の世界では、時代と共に求められるスピードや品質、スケーラビリティが大きく変化してきました。そしてそれに応じて、ソフトウェアの「設計」に求められる姿も進化しています。

本記事では、変化に強いソフトウェア設計の考え方を、現代の代表的なアーキテクチャと共に読み解いていきます。


1. なぜ設計が重要なのか?

「今動く」より「長く動く」コードを

  • 設計の良し悪しは、拡張性保守性チームの生産性に直結します。
  • 技術や要件が常に変わる時代に、「変わっても壊れない」設計こそ価値を生み出します。

2. 設計原則の基本:変化を味方にするために

代表的な設計原則

  • SOLID原則

    • S:単一責任の原則(Single Responsibility Principle)
    • O:オープン・クローズドの原則(Open/Closed Principle)
    • L:リスコフの置換原則(Liskov Substitution Principle)
    • I:インターフェース分離の原則(Interface Segregation Principle)
    • D:依存性逆転の原則(Dependency Inversion Principle)
  • DRY:Don't Repeat Yourself(繰り返すな)

  • KISS:Keep It Simple, Stupid(単純に保て)
  • YAGNI:You Ain't Gonna Need It(それ、本当に必要?)

3. 現代に見る代表的なアーキテクチャ

1. MVC(Model-View-Controller)

  • 概要:UIを「モデル」「ビュー」「コントローラ」に分離
  • 特徴:Webアプリケーションで広く使われる
  • 変化への強さ:UIとロジックの分離が容易、だがスケールには課題も

2. レイヤードアーキテクチャ

  • 概要:プレゼンテーション層、アプリケーション層、ドメイン層、インフラ層など、層に分けて設計
  • 特徴:伝統的で理解しやすい、企業向けシステムで多い
  • 変化への強さ:層ごとに独立性を保てれば強い、結合が高まると脆弱

3. マイクロサービスアーキテクチャ

  • 概要:システムを小さなサービス群に分割し、独立して開発・運用
  • 特徴:クラウド時代の主流。DevOpsやCI/CDと親和性高
  • 変化への強さ:1つの変更が他に波及しにくい。運用・テストは複雑

4. クリーンアーキテクチャ

  • 概要:ユースケース中心に設計。内側が外側に依存しない
  • 特徴:Robert C. Martin(通称 Uncle Bob)提唱
  • 変化への強さ:インフラ変更・フレームワーク変更にも強靭。設計力が問われる

5. サーバーレスアーキテクチャ

  • 概要:クラウドのFaaS(Function as a Service)を利用し、インフラ管理を最小化
  • 特徴:Lambda(AWS)、Cloud Functions(GCP)など
  • 変化への強さ:スケールやリソース調整はクラウドに任せる。ただしロックインやデバッグ性に課題

4. 変化に強い設計の本質

  • 抽象化:依存を柔らかくし、交換可能にする
  • 関心の分離:1箇所の変更が1箇所で済むように
  • テスト容易性:テストしやすいコードは設計が良い
  • 技術への執着を捨てる:技術は手段。設計は目的を支えるために

5. まとめ:設計に正解はないが、良い「流儀」はある

ソフトウェア設計には、唯一の正解は存在しません。プロジェクトの規模、チームのスキル、ビジネス要件などによって、最適解は常に変わります。しかし、どんな状況でも「変化に強い設計」を志すことで、長く価値を生むコードを書き続けることができます。

アーキテクチャの流儀。それは単なる技術選定ではなく、変化を前提とした思考法なのです。


参考リンク

参考書籍