構造体とクラスの違いとは?主要言語ごとの比較と設計の考え方
1. はじめに
プログラミングにおいて、データをまとめて扱うための手段として「構造体(struct)」と「クラス(class)」があります。これらは、データの集まりを表現するための型ですが、言語や用途によって使い分けが求められます。
本記事では、構造体とクラスの基本的な違いを解説し、主要なプログラミング言語における実装例と設計上の考慮点を紹介します。
2. 構造体とクラスの基本的な違い
2.1 構造体(struct)
- 値型:構造体は値型であり、変数に直接データが格納されます。
- 軽量:小規模なデータ構造に適しています。
- 継承不可:他の構造体やクラスから継承することはできません。
- 用途:数値、座標、色などの小さなデータの集まりに適しています。
2.2 クラス(class)
- 参照型:クラスは参照型であり、変数はオブジェクトへの参照を保持します。
- 柔軟性:継承やポリモーフィズムなどのオブジェクト指向の機能をサポートします。
- 用途:複雑なデータ構造や振る舞いを持つオブジェクトに適しています。
3. 各言語における構造体とクラスの違い
3.1 C言語
- 構造体:
struct
キーワードを使用して定義します。関数ポインタを含めることで、関数のような振る舞いを持たせることも可能ですが、オブジェクト指向の機能はサポートされていません。
struct Point { int x; int y; };
- クラス:C言語にはクラスの概念はありません。
3.2 C++
- 構造体とクラスの違い:C++では、
struct
とclass
はほぼ同じ機能を持ちますが、デフォルトのアクセス修飾子が異なります。struct
:メンバーのデフォルトアクセス修飾子はpublic
。class
:メンバーのデフォルトアクセス修飾子はprivate
。
struct Point { int x; int y; }; class Circle { private: int radius; public: void setRadius(int r) { radius = r; } };
- 用途の違い:
struct
は主にデータの集まりを表現するのに使用され、class
はデータとその操作を含むオブジェクトを表現するのに使用されます。
3.3 C
- 構造体:値型であり、スタック上に割り当てられます。軽量なデータ構造に適しています。
public struct Point { public int X; public int Y; }
public class Circle { private int radius; public void SetRadius(int r) { radius = r; } }
- 主な違い:
- 構造体は継承できませんが、クラスは可能です。
- 構造体はデフォルトでパラメータなしのコンストラクタを持ちませんが、クラスは持ちます。
3.4 Swift
- 構造体:値型であり、コピー時に値が複製されます。軽量なデータ構造に適しています。
struct Point { var x: Int var y: Int }
- クラス:参照型であり、コピー時に参照が共有されます。継承やデイニシャライザなどの機能をサポートします。
class Circle { var radius: Int init(radius: Int) { self.radius = radius } }
- 主な違い:
- 構造体は継承できませんが、クラスは可能です。
- 構造体はデイニシャライザを持ちませんが、クラスは持ちます。
4. 設計上の考慮点
- データのサイズと複雑さ:小さくて単純なデータ構造には構造体を、大きくて複雑なデータ構造にはクラスを使用するのが一般的です。
- 継承の必要性:継承やポリモーフィズムが必要な場合はクラスを使用します。
- パフォーマンス:構造体はスタック上に割り当てられるため、メモリの割り当てと解放が高速です。ただし、大きな構造体を頻繁にコピーする場合はパフォーマンスに影響を与える可能性があります。
5. まとめ
構造体とクラスは、データをまとめて扱うための手段として、それぞれ異なる特徴と用途を持っています。プログラムの設計において、データの性質や必要な機能に応じて、適切に使い分けることが重要です。
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