それ、ドキュメントだけで本当に伝わってる?図解とスライドの力を再認識せよ
1. はじめに
「仕様は正式ドキュメントに書いてある」「設計書を読めば分かる」
――あなたの職場にも、そう言われた経験はありませんか?
確かに、正式ドキュメントは技術的に“正しいことを記録する”ためのものです。
しかし、それだけで「伝わる」かと問われれば、答えはNO。
そこには、“補助資料”の存在が大きな意味を持ちます。
本記事では、なぜドキュメントだけでは足りないのか、なぜ図解やスライドが必要なのかを技術的・実践的な視点から解説します。
2. 正式ドキュメントとは何か?
正式ドキュメントとは、以下のような「技術的事実を正確に残す」ための資料です。
- 設計書(システム設計・インフラ設計など)
- API仕様書
- データベース定義書
- 運用手順書 など
これらは主に以下の目的に使われます。
目的 | 特徴 |
---|---|
仕様を保存する | 正確さ、網羅性が最重視 |
法務・監査への対応 | 改ざん不可、記録性が必須 |
将来のメンテ用 | 第三者が読んで理解できる設計 |
しかし、読む人すべてがドキュメントからすぐに理解できるとは限りません。
3. 伝わる資料が必要になる理由
3.1 ドキュメントは“読まれない”前提で考える
設計書が100ページある場合、それを全て読んで理解してくれる人はほとんどいません。
レビューで使うのは1ページの構成図、顧客に見せるのは5枚の提案スライドです。
3.2 “正しい”と“分かる”は別物
- 正式ドキュメント:正しい情報が網羅されている
- スライドや図:どういう意図で、どんな効果があるかが視覚でわかる
例えば、以下の2つを見比べてください。
正式ドキュメント(テキスト): 「本システムでは、マイクロサービス間通信にgRPCを用い、Pub/Subによる非同期連携を併用する」 → 読まなければわからない
プレゼン図: [Frontend] → gRPC → [User API] → Pub/Sub → [Worker] → 一瞬でイメージできる
4. 補助資料として有効なものとは?
資料タイプ | 効果 | 例 |
---|---|---|
構成図・フロー図 | 処理の流れ、全体構成の把握 | システム全体図、ER図 |
スライド資料 | 意図、背景、課題を伝える | 要件整理、ビフォーアフター比較 |
表形式まとめ | 選定理由や比較の整理 | SaaS比較、技術選定表 |
モックアップ | UI/UXのイメージ共有 | 画面イメージ、プロトタイプ |
メモ書きコメント | 小さな補足、運用Tips | Slackメモ、README補足 |
5. 目的別に見る「資料の必要性」
シーン | 正式ドキュメント | 補助資料の必要性 |
---|---|---|
新人教育 | △ | ◎(図・例が重要) |
顧客への提案 | △ | ◎(図・効果説明) |
設計レビュー | ○ | ◎(差分図など) |
チーム間の情報共有 | ○ | ○(概念図が有効) |
運用マニュアルの補足 | ◎ | ○(図表で補足) |
6. 図解・スライドはなぜ伝わる?
- 構造を“空間で”捉えられる
- 文字量が減り、視線が分散しない
- 会話のきっかけになりやすい(レビューがしやすい)
文章よりも早く“意味が伝わる”のが視覚資料の最大のメリットです。
7. よくある誤解と注意点
「図は感覚的だから正確じゃない」
→ 図は“理解の入り口”。正式な仕様はドキュメントで担保すればよい
「パワポを作るのが面倒」
→ 一度作った図は、レビュー・議論・マニュアルでも再利用できる“資産”になります
8. まとめ:正しく伝えるには、図と文の両方が必要
項目 | 正式ドキュメント | 図解・補助資料 |
---|---|---|
目的 | 情報の記録・保存 | 情報の理解・共有 |
特徴 | 網羅性・正確性 | 直感性・視覚性 |
向いている場面 | 運用・監査・詳細設計 | 教育・提案・レビュー |
結論:正しく書いた情報を、正しく“伝える”ために補助資料は必要